「ブランド」は増やすな。「ブランド」は磨け①
「スーパードライの1本足打法で成長は続くのか?」。
福地茂雄氏は、1999年にアサヒビールの社長に就任した当初、
いろいろな人からこのような指摘を受けていた。
スーパードライの快進撃は衰えることなく、
98年には全体のビール出荷量でキリンビールを抜き、
じつに45年ぶりに年間シェア1位に立った。
しかし、スーパードライも87年の発売から、
この当時で10年の時を経ていましたから、
これまでのような勢いが続くとはかぎりません。
だから、「足が1本では、リスクが大きすぎる。
スーパードライで利益を上げているうちに、
2本目、3本目の足を
育てておく必要があるのではないか」という指摘を、周囲から
たびたび受けていたのです。
そのとき、福地氏はこう切り返しました。
「では、2本足、3本足で
どこの企業が成功しているでしょうか?」
嗜好品は集約される。
複数のブランドを展開しても、
最後はトップブランドに戻ってくるものす。
1本足打法が正しい経営手法であるという哲学は、私の経験則から
出てきたものです。
アサヒビールでは、86年に「アサヒ生ビール」(コクキレビール)を発売したときに、熱処理した「アサヒビール」も並行して発売していました。
しかし、スーパードライの発売とほぼ時期を同じくして、「アサヒビール」を終売としました。
これを機にアサヒビールはブランドを増やすのではなく、
スーパードライというトップブランドを磨きに磨いて輝かせる戦略に転換したのです。
嗜好品にかぎらず、大衆消費財の多くはそうだと思いますが、
トップメーカーやトップブランドは必ず生き残ります。
たとえば、業界全体が縮小すると、下位ブランドは大きな影響を
受けますが、トップブランドはそれらと比較して影響が少ないもの
です。
逆にシェアの面では、トップブランドのシェアは上昇することもあります。
1本足打法は、安定成長への王道です。
だからこそ、つねに「一番」を目指さなければならないのです。
Diamond記事より